『天地明察』沖方丁

天地明察沖方丁を読んだ。
おもしろい。
読み始めて、ごはん食べるのも惜しいくらいに読み続けたのは、小説では久しぶりだ。
どうして今まで読まなかったのか、またも食わず嫌いにしていたか、と反省している。
読み始じめて、吉川英治を思い出した。読み終わって後ろと見ると「吉川英治新人賞受賞」とある。
私は日本の小説家では吉川英治が一番好きだ。中学生のころ、那覇のそのころの一番中心のデパートで「吉川英治展」というものをやっていた。私は、そこになけなしのお金をはたいて見に行った記憶がある。バスは乗らずに歩いていき、確か入場料かなんかが必要だったかもしれない。
それ以来、吉川英治が私の中での日本人作家の『小説家』だった。彼の小説はほぼ全部読んだ。
大人になって、日本の小説というものがつまらなくなり読まなくなり、小説といえば外国の作品ばかり、日本の本ではノンフィクションばかりを読みあさるころにも、本棚には吉川英治井上靖はあった。
で、『天地明察』を読んで、まず吉川英治を思い出したことが、嬉しく感じた。
同時に「作家になるぞ」とかかげた人間として、悔しく、羨ましく、感嘆している。
すぐれた作品は、その分野からも離れていた読者を、引きもどす力がある。
凄い作品は、その分野を目指す人間に、頭を下げさせる力がある。