現実逃避本のすすめ

増永寛之の「仕事頭がよくなるアウトプット勉強法」を読んだ。
ほとんどの事に賛成で、さっそく明日から実行しようと思った。
だが、一つだけ異議がある。
作者は、「『現実逃避本』は棚から排除せよ」と言っている。
私はこれについてだけは、明確に異なる意見を持っている。

私は、
『現実逃避本』を大事にしよう、と考えている人間だ。
本の読み方はいろいろある。
人生の糧になる本、教養になる本、情報として読む本、勉強のために読む本、など。

私は現実を逃避するために読む本、
読んで夢を見て、束の間の苦しさを忘れる本、を大事にしたいと思っている。
現代の人間こそ、積極的に『現実逃避本』を持つべきだ。
食べ物だって、すべてが栄養になると考えて、栄養になるものだけを考えて食べるのは、味気ない。

今の人間こそ、とてもハードに働く人間こそ、たくさんの本を読む人間こそ、ただ楽しむために、夢見るために、現実を逃避するために、読む本があってもいい。
むしろ、読まなければならない本のほかに、積極的に無駄ともいえる現実逃避本を読むべきだ。

吉川英治の『宮本武蔵』の中に、遊びの効用が書いてある章がある。
記憶によると、高名な花魁が武蔵に三味線を参考にして諭す。
三味線の弦を緩めることを例に引いて、遊ぶこと、休むことの大切さを説く。
ひたすらにまっすぐ修行していた武蔵は、それで悟るのである。
『遊び』も必要だ。と。

本を読むことに関する『遊び』とは、『現実逃避本』である。