「あの砦には誰かいる」

昔、歴史小説を読んでいて、「あの砦には誰かいる」という言葉を覚えた。
不思議なことに、その小説がなんだったかも、主人公が誰だったかも思い出せないのに、その言葉だけは鮮明に覚えている。
それは、ある人が、誰だか知らないがそこに人材が存在することを発見する時、の言葉だった。
私の記憶によると。小説では。
こちら側の将軍が、敵陣の能もない将軍に率いられた砦を、次つぎに落としていく。だが、とても簡単に落とせると思っていた、さほど重要でない小さな砦だけが落とせないでいる。
将軍は気にしない。他の砦を落としている間に、いずれ落ちるだろう。時間の問題だと思う。だがすべての砦を落とした後、最後にいまだその砦が残る。
将軍は、任せていた部下のところにやってくる。そして聞く。「どうして落とせない?」「分かりません。難しい砦じゃないんですが。落ちないんです」
将軍は、その砦を見つめる。そして静かに言う。
「あの砦には誰かいる」 人材、人物を見つけた瞬間だった。
誰だかわからない。だが確かにできるやつが、そこにいる。敵だろうが、思いもよらない場所だろうが、その場所には確かにいるのだ。人材が。人物が。才能が。
部下は、何日も攻めていて、砦の落ちない理由が地形やなんだかと思っている。だが、将軍は「そこに誰か=人材がいる」から、砦が堅いことが分かる。
で、結局は、将軍は敵方のその人材を取り立てて起用するのだ。その逸材は、最後は軍師になる。
というわけで、私は将軍でもなく、軍師でもなく(笑)、何でもないが、この言葉だけはよく使う。おもしろいし。
例えば。
誰かの素晴らしいホームページを見る。「ここには誰かいる」(笑)
新聞で、どこかの組織・企業の成功している、魅力的な、一連の広報・広告キャンペーンを読む。「あの会社には誰かいる」(笑)
選挙で、ある政党の候補者の、成功している選挙戦を垣間見る。たぶんすごい選挙参謀がいると感じる。すると「あの陣営には誰かいる」(笑)
という具合に。
昨日、あることがあって話し合いをした。そして見つけた。
「ここには彼がいた」