都市は西に向かって発展する

都市は西に発展するという。
都市が成長するときは西に向かってより伸び、都市が膨張するときはより西側に大きく膨張し、繁華街や中心地はより西に移動していく、というのだ。
これは都市の場合で、この「都市」という部分に国や町や街、地域という単語は当てはめらない。あくまで西に発展する特徴を持つのは「都市」だ。
たとえば東京はいい例で、江戸から比べるとどんどん西側に発展していっている。これは東に東京湾があってこれ以上東側には伸びきれないという特徴もあるが、実際は都市の法則に従っているだけだ、と。
文明学者だったか歴史学者だったか、とにかく大言壮語な学問の名が付いた著書の書いた本で、初めてそれを読んだ20代のとき、目からうろこが落ちるような気がした。
私は「本当か?」と北京市の地図を寄宿舎のベッドに広げて、見つめたものだ。当時私は北京大学の勺園大楼(しゃくえんだいろう)と呼ばれる留学生寄宿舎に住んでいた。壁には中国全土の地図が貼っており、その地図上の歴史上でも有名な地名である中国の各都市を眺めたものだ。
その学者の言い分は、100年単位でみると都市ははっきりと西に発展し、成長の速い都市は10年単位で目に見えるようになる、と。
実は確かにその後すぐに東京は、都庁が有楽町から新宿に移り、象徴的な意味の中心地も西側に移動した。100年たったら立川か町田に移動するかもしれない。(笑)
それから、私は世界中の都市といっていい街に行くたびに、心の中で100年前と比べてみる。いや、100年前のその地域のことなんて知らないけどさ。(笑)気持ちの上で、思いを馳せるという意味だ。
そして西に発展するという特徴があまり見いだせない場所については、勝手に「ここは都市ではなく町だ」とか「都市というほどではなく大きな街くらいかもしれない」と思うようになった。
私の生まれ故郷の那覇市は、あの小さな範囲でも中心が首里から西側に移動しているから、「那覇市は都市である」と認定した(笑)。